今日紹介したい絵本はこちら!
『Fish is Fish』 作・絵:レオ・レオニ
『さかなはさかな』 訳:谷川俊太郎
おたまじゃくしとさかなはとっても仲良し。そのうちおたまじゃくしはカエルになって池から飛び出て外の世界を見てきて・・・。
絵本のあらすじ
おたまじゃくしと魚は離れがたいほど大の仲良し。2人は同じような小魚だと思っていたのに、ある日、おたまじゃくしには2つの足が生えてくる。「ほら!ぼくカエルだよ!」と言っても、魚は「昨日までは僕と同じような魚だったじゃないか」と聞く耳を持たない。
2人は散々言い合って、「カエルはカエル、魚は魚。そう言うことだ」とおたまじゃくしは言う。
おたまじゃくしには、後ろ足も生えてきて、尻尾も短くなって、ついにはカエル🐸になって陸に上がっていってしまう。
魚🐟はいなくなったカエル🐸のことを思いながら何日も、何週間も経ってしまっていた。そのうち魚🐟も立派な大人の魚🐟に成長していた。
そんなある日、カエル🐸は池に戻ってきた!そして陸の世界で見た鳥や牛、人間たちの話をした。魚🐟はカエル🐸の話を聞いて、陸の世界を想像する。もう、眠れなくなるぐらい心がワクワクした。とても不思議で、素敵な世界。いいなあ。見てみたいなぁ。行ってみたいなぁ。
そしてカエル🐸はまた行ってしまった。魚🐟は陸の世界を見てみようと一大決心をする。ありったけの力で尾びれで跳ねて陸へ上がった。
そこは乾いていて暖かい草の上だった。息ができなくて苦しくて、弱々しく「助けて」と言った。そこに運良くあのカエル🐸がいて、ありったけの力で魚🐟を池の中に押し戻してくれた。
気を失って水に浮かんでいた魚🐟が深く息をすると、エラの中をキレイで冷たい水が通るのを感じた。そして体が軽くなって尾びれを動かすだけで前へ後ろへ、上へ下へ体を動かすことができた。
陽の光が水草の間を差し込み、キラキラと輝く色がゆらゆらとやさしく揺れた。そこは確かにどこよりも美しい世界だった。
魚🐟はニコッと笑ってカエル🐸に言った。「君の言うとおりだ、魚は魚だ。」
仲良しの友達の旅立ちと自分の世界
大人にはグサグサ刺さる絵本だと思います。大人は誰しも経験がある方が多いかもしれないですね。仲良しの友達と進学や就職で別々になり成長していく過程で、誰もがこんな気持ちなったことはあるのではないでしょうか。同じ世界で成長し合っていた友達なのに、環境が変わり、それぞれの道に進み始めた時、友達のいる世界をとても羨ましく、そしてとても遠く感じる時ってありますね。
同じ小魚だと思っていたのに、おたまじゃくしは足が生えて、カエルへと成長し外の世界に飛び立っていきます。自分だけ置いて行かれた気持ち。自分だけがカエルを思っている。その間、自分も大人の魚になっているのに、自分の成長にも気づかないくらいに。
戻ってきたカエルから聞いた陸での世界はとても魅力的。鳥って?牛って?人間たちって?池の中しか知らない魚が想像した鳥や牛、人間たちの姿は魚に羽が生えたり、ツノが生えたりしたもの。魚はさらに見たことのない世界に取り憑かれます。
でも、自分でやってみないと、自分の目で見てみないと分かりません。
魚は陸の世界に上がってみて、息を出来ない苦しさを経験します。そして、息を吹き返したその時、自分がいた世界はとても美しいと言うことに気付きます✨
その時の描写がとても綺麗です。
The sun rays reached down within the weeds and gently shifted patches of luminous color. This world was surely the most beautiful of all worlds.
『Fish is Fish』より引用
自己理解と他者理解、そして自分と他人は違うんだという境界線を引くことはとても大事なことです。自分にないものを羨ましく思ったり、人と比べて落ち込んでしまったり、誰もが経験したことのあることだと思います。
でもこの魚みたいに、自分の世界から飛び出したことで、自分が今までいた世界の美しさに気付くことありますね。「僕はここの世界がいい!」って納得して思えたんですね。だから「fish is fish.」と言えたのだと思います。
この絵本は色鉛筆で重ね描きしたようなとても優しく綺麗な絵です。やっぱりレオ・レオニの本は好きだなぁ。
この本は少し難しいのですが、英語のレッスンで”Frog life cycle カエルの一生” を学び、おたまじゃくしに2本足が生え、カエルになる描写などがあるので、小学生高学年のお子さんのレッスンでも読んでみました。
メッセージ性まで読みとることは難しいと思いますが、何かの時に「あの時に読んだ絵本だ!」と思い出して手に取ってくれたら嬉しいなと思っています。
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