【新学期におすすめ英語絵本3選】「自己肯定感を上げる」に、ちょっと違和感があります

絵本

来週から、新学期がはじまります。

学校に行くのが楽しみな子も、ちょっと憂鬱な子もいるかもしれません。

この時期になると、「自己肯定感」という言葉をあちこちで見かけるようになります。自己肯定感を上げる声かけ、自己肯定感を高める習慣、自己肯定感を育てる褒め方。

とても大切な言葉だと思います。ただ、私はこの言葉の使われ方に、ずっと小さな違和感を持っていました。

自己肯定感は、褒めれば上がるものなのだろうか、ということです。

英語で教わったときに、何度も出てきた言葉

私はカナダで幼児教育を学びました。

英語圏では、自己肯定感にあたる言葉として self-esteem を使います。ただ、日本語の「自己肯定感」とぴったり同じかというと、少し違うように感じています。

授業のなかで、教授が何度も口にしていた言葉があります。significance です。

日本語にするなら、「あなたがここにいることには意味がある」という感覚でしょうか。

褒めるというのは、できたことへの評価です。何かをしたから、うまくいったから、いいねと伝える。

でも significance は、何もしていなくても成り立ちます。できてもできなくても、いてくれることが大事だと伝わっていること。

このふたつは、似ているようで、まったく別のものです。

そして、日々の関わりのなかで少しずつ積み上がっていくのは、後者のほうだと思っています。

教室で、私が大切にしていること

だから私は、レッスンのなかで意識していることが3つあります。

1つ目は、選択肢を渡すこと。

どの色を使うか、どの順番でやるか。決めるのは子どもです。小さなことでかまわないので、自分で選ぶ場面をできるだけ多くつくります。今日の天気や季節も1人ずつ子どもたちに聞きます。それぞれ感じ方が違うからです。

2つ目は、受け止めること。

うまく言えなくても、日本語で答えても、今日は乗り気じゃなくても、それでいいということにしています。できたから認めるのではなく、いることを認める。

3つ目は、気持ちを言葉にして返すこと。

お友達に優しくしてくれた場面を見たら、必ず「ありがとう」と伝えます。えらかったね、ではなく、うれしかった、と伝えます。誰かのためにした行動が、ちゃんと誰かに届いたと本人がわかること。

派手なことは何ひとつしていません。でも、こういう小さなことが、自己肯定感が育っていく土壌になるのだと思っています。

この時期に読みたい絵本 3冊

1. I like me! / Nancy Carlson

自分のことが大好きなブタが主人公です。足が短いことも、おなかがまるいことも、全部ひっくるめて自分が好き。

私がこの本でいちばん好きなのは、この場面です。

When I feel bad, I cheer myself up.
When I fall down, I pick myself up.
When I make mistakes, I try and try again!

落ち込まないのではありません。落ち込んだあと、自分で自分を立て直しているのです。

誰かに褒めてもらって元気になるのではなく、自分で自分を励ませる。significance が育っている子の姿が、ここにあると思います。

2. Pete the Cat: I Love My White Shoes / Eric Litwin

まっ白な靴を履いたピートが歩いていくと、いちごを踏んで赤くなり、ブルーベリーを踏んで青くなり、泥を踏んで茶色くなります。

だいすきなまっ白の靴が違う色になっても、ピートは少しも動じません。歌うのを、やめないのです。

Because it’s all good.

この一行が好きです。

靴の色が変わっても、ピートはピートのままです。起きたことと、自分の価値が切り離されている。

読んでいて、沖縄の「なんくるないさー」に似ているなと思いました。

この言葉は「なんとかなるさ」と訳されることが多いのですが、本来は「まくとぅそーけー なんくるないさ」という長い言葉の後半だそうです。前半の意味は、正しいことをしていれば、というもの。

正しいことをしていれば、あとは自然とあるべきところに落ち着く。

ピートの It’s all good も、ただの楽観ではないのかもしれません。

3. When Sophie Gets Angry — Really, Really Angry… / Molly Bang

ソフィーは、お姉ちゃんにおもちゃを取られて、爆発します。

She roars a red, red roar.

そして家を飛び出して、走って、泣いて、木にのぼります。

私がこの本を好きなのは、そのあとです。

She feels the breeze blow her hair.
She watches the water and the waves.
The wild world comforts her.

もう、理屈抜きです。

風と、海と、波が、ソフィーを落ち着かせます。誰も追いかけてきません。誰も叱りません。

そして落ち着いたソフィーが家に帰ると、家族はいつも通りにそこにいて、何も変わっていませんでした。

怒っても、飛び出しても、帰る場所は変わらない。

これほど significance を静かに描いた絵本を、私はほかに知りません。

今日、おうちでできること

ひとつだけ提案させてください。

今日、お子さんに何かひとつ、選ばせてみてください。

夕飯のおかずでも、お風呂に入る順番でも、寝る前に読む本でも構いません。「どっちがいい?」と聞いて、選んだほうを、そのまま採用する。それだけです。

自分の選択が本当に通ったという経験は、褒め言葉よりもずっと深いところに残ります。

新学期は、環境が大きく変わる時期です。変わらないものが家のなかにあると、子どもはそれを支えにします。

そのひとつが、「自分で決めていい」という感覚なのだと思っています。

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