子どもの世界、ファンタジーの世界。大人は誰しも子ども時代があったはずなのに、いつしかそんなワクワク、ドキドキ、ビクビクするような世界忘れてしまっていることがありますね。
今日紹介する本はそんなファンタジーの世界に連れて行ってくれる本です。
『WHERE THE WILD THINGS ARE』作:モーリス・センダック
『かいじゅうたちの いるところ』訳:じんぐう てるお
マックスはいたずらばっかり。お母さんに「この かいじゅう!」と言われると「おまえをたべちゃうぞ!」と言い返します。お仕置きとして夕飯抜きで自分の部屋に行くことを命じられます。すると、その部屋からはにょきにょきと草木が生い茂り始め、あたり一面違う世界が。マックスはボートに乗って航海に出かけます。その先の世界にいたのは・・・。
超ロングセラー本
この本の表紙を見たことがある!と言う方は多いのではないでしょうか。1963年に出版、翌年にコールデコット賞を受賞しています。世界中で読まれている本で、英語圏や日本語圏の保育施設では、必ずと言っていいいほど置いてある本ですね。
コールデコット賞(コールデコットしょう、英: Caldecott Medal)は、アメリカ図書館協会の下部組織である児童図書館協会(英語版)(ALSC)が、アメリカ合衆国でその年に出版された最も優れた子ども向け絵本に毎年授与している賞(メダル)である。
Wikipediaより引用
私がこの本を初めて読んだのはつい数年前です。その時の印象は、なんか全体的に暗いし、このかいじゅうも不気味だし、悪戯好きなマックスの夢の話でしょう?あんまり惹かれないなと思っていました。その頃は保育施設の”先生”という職業を今とは違う捉え方をしていました。先生は教える職業だと固い頭と干からびた心で思い込んでいたような気がします。子どもと同じ目線に立って、同じ方向を見るということが出来ていませんでした。
この本の魅力
お母さんに怒られて、もやもやしているマックスの気持ちはファンタジーの世界で発散していきます。マックスが入り込んだその世界は、怖いかいじゅう達がいるところだったので、最初は不安そうな顔をしています。ところがどんどん勇ましい顔つきになって、ついには魔法をかけてかいじゅう達を手懐けて王様👑に君臨します。月明かりの下でかいじゅう達と踊ったり、ジャングルの木で遊んだり、その楽しさは最高潮!!!しかも気まぐれに「夕飯抜きよ!」のお仕置きまで与えて。笑 この子どもの目線で描かれた世界は子ども達の心を惹きつけるのでしょう。
この絵本の描画は、暗い雰囲気があって最初は好みではありませんでした。しかし、よく見てみると、とても丁寧に、繊細に、そしてダイナミックに描かれていて、その独特の世界観に惹き込まれます。この暗い雰囲気が、知らない世界に足を踏み入れるビクビク感を助長させてくれます。マックスの表情も、かいじゅうの表情もどんどん変化していきます。そして、あれ?このかいじゅうの中で一体だけ人間の足になっています。なぜでしょう?そのかいじゅうはマックスを肩車したり、表情もなんだか見守っている様子。なんだか愛情を感じますね。
この絵本は余白の使い方を工夫しています。最初は、余白が大きく、絵は小さいです。マックスの心の躍動感を表すようにどんどん絵が大きくなっていきます。そして最後はまた余白が大きくなり、真っ白なページで終わります。温かい気持ちを残して。
この最後のページ。英語版は真っ白のページですが、日本語版は著作権の関係で文字があります。大人の事情ですね笑 私は著者の意向が全てだと思っています!
訳の難しさ
英語でこの本を読んだ時「このwild thingsは日本語版では何て訳してるんだろう?」と思いました。その後日本語版を読み、かいじゅうと翻訳されているのを見て、なるほどなぁー!と唸りました笑 ちなみに出版された3年後に最初に翻訳された時は「おばけ」だったようです。
日本では1966年に『いるいる おばけが すんでいる』というタイトルでウエザヒル出版から最初に翻訳された[1]。このときの本文は七五調であった。
Wikipediaより引用
この絵本、作中の使っている英語自体は難しくないのですが、日本語に翻訳そうとすると、とても難しいのです。この絵本の日本語版は、ごく自然に、作品の世界観に寄り添うように翻訳されているんです。翻訳の奥深さを感じます。この絵本が日本でも大人気な理由は、翻訳の力も大きいと思います。
大人になって忘れてかけていたファンタジーの世界、この絵本を手に取ればそこに入り口がありますよ!
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